求人票を信じて失敗…残業だらけの会社から脱出した体験談

「残業はほとんどありません、完全週休二日制です」──求人票のその言葉を信じて入社したはずなのに、気づけば毎日2時間以上の残業に加えて、ほぼ毎週のように休日出勤が当たり前の日常。気力も体力も削られて、土日が来ても「休める」実感はなく、ただ疲れを引きずったまま月曜日を迎える日々。こんなはずじゃなかったのに…と後悔しながらも、「辞めたら生活はどうなるのだろう」と不安がよぎり、なかなか一歩を踏み出せない。これはそんな葛藤を繰り返したある男性が、実際にどのようにしてその環境から抜け出したのかの記録です。

目次

第一章:入社時に信じた求人票の甘い言葉

入社を決めた理由はとてもシンプルでした。「残業ほぼなし」「完全週休二日制」という条件が並んでいたからです。前職で長時間労働に疲れきっていた私にとって、その文言はまさに救いのように見えました。面接でも「繁忙期以外は定時退社が基本です」「休日出勤はほとんどありません」とはっきり言われ、安心して内定を承諾したのです。

ところが、入社して最初の週から違和感はありました。定時を過ぎても帰る人はほとんどおらず、「新人なのに先に帰るのか」という空気が漂う。先輩社員に聞くと、「まぁ、この部署はいつもこんな感じだから」と笑いながら答えが返ってきました。その日から、気づけば毎日が2時間以上の残業。さらに一か月も経たないうちに「今週末は出られるよね?」と当然のように休日出勤が組み込まれていきました。

あのとき、求人票や面接で聞いたことを鵜呑みにせず、もっと詳しく調べておけばよかったと何度も後悔しました。しかし当時の私は「どの会社も多少はこんなものなのだろう」と自分を納得させてしまっていたのです。

第二章:職場で感じた違和感と心身の変化

最初のうちは「新しい環境だから慣れるまで大変なのだろう」と自分に言い聞かせていました。しかし、毎日遅くまで残り、週末は当然のように呼び出される生活が続くうちに、少しずつ心身に異変が現れていきました。

平日は帰宅するとシャワーを浴びるだけで精一杯。夕食を作る気力もなく、コンビニのお弁当を口に運びながら眠ってしまうことも増えました。週末も仕事が入るため、まとまった休みが取れず、友人からの誘いを断ることが習慣に。気づけば「仕事以外に何もできない自分」になっていました。

特にきつかったのは朝です。目覚まし時計が鳴っても布団から起き上がれず、「今日も残業か」「どうせ休めない」と思うだけで体が重くなる。電車の窓に映る自分の顔は、以前よりも明らかに疲れ切っていました。

「このままでは長く続けられない」──頭ではわかっていても、すぐに行動に移せるわけではありませんでした。生活のために働かなくてはならない現実と、心身の限界が迫る感覚。その板挟みの中で、私は毎日同じ問いを繰り返していたのです。「本当に、このままでいいのだろうか?」と。

第三章:脱出を決意したきっかけ

決定的な瞬間は、ある日曜の朝に訪れました。前日も遅くまで仕事をしていたため、体は鉛のように重く、頭痛も残っていました。本来なら休めるはずの休日。しかし、スマホに届いたのは「午後から出社できる?」という上司からの短いメッセージ。見た瞬間、心の中で「もう限界だ」と声がしたのです。

その日はしぶしぶ職場へ向かいましたが、電車の窓に映る自分の顔はひどく疲れ切り、目に生気がありませんでした。「このままでは、ただ仕事に人生を食いつぶされるだけだ」と強烈に思ったのを今でも覚えています。

それまでは「転職なんて勇気がいるし、今より悪くなるかもしれない」という不安が先に立ち、一歩を踏み出せませんでした。けれど、あの日から気持ちは逆に振り切れました。「この職場を出ないことこそが最大のリスクだ」と。そう確信した私は、まずは転職サイトに登録し、情報収集を始めることにしたのです。

第四章:転職活動のプロセス

転職を決意したものの、最初は「本当に良い職場なんてあるのだろうか」という不安の方が大きかったのを覚えています。それでも動かなければ何も変わらないと考え、まずは転職サイトに登録し、求人を眺めることから始めました。

そこで意識したのは、「前職で失敗したポイントを繰り返さないこと」。求人票に「残業なし」と書かれていても鵜呑みにせず、企業の口コミサイトや掲示板で実際の労働環境を確認しました。面接では「残業時間は実際どのくらいか」「休日出勤はどれほどあるのか」と、以前なら聞きづらかった質問もあえて投げかけるようにしました。

また、複数の転職エージェントにも登録し、担当者に「残業が少ない職場を最優先したい」とはっきり伝えました。条件を明確にすることで紹介される案件も絞られ、自分が納得できる企業に出会いやすくなったのです。

最初は不安でいっぱいでしたが、動き出してみると少しずつ気持ちが前向きになっていきました。「自分にも選択肢がある」と実感できたことが、転職活動を続ける大きな支えになったのです。

第五章:転職活動中の生活と変化

転職を決意してからの毎日は、不安と希望が入り混じった独特の時間でした。仕事をしながら求人を探すのは正直大変で、帰宅後や休日をほとんど面接準備や情報収集にあてることになりました。疲れた体に鞭を打ちながらPCに向かう日もありましたが、不思議と心は少し軽くなっていたのを覚えています。

それまで「仕事に支配されている」と感じていた日々が、「自分で選んで未来を変えようとしている」日々へと変わったからです。応募先からの返信メールに一喜一憂し、面接でうまく話せず落ち込むこともありましたが、同時に「今の職場以外にも道がある」と実感できたことは大きな支えになりました。

また、この期間に自分の生活を見直す時間も増えました。睡眠を優先したり、休日には意識してリラックスするようにしたりと、少しずつ「無理をしない習慣」が身についていきました。転職活動は決して楽ではありませんでしたが、心のどこかで「すでに出口に向かって歩いている」と思えるだけで、毎日の重さが以前よりもずっと和らいでいったのです。

第六章:退職を伝えて起きたこと

転職先が決まり、ついに退職を伝える日がやってきました。上司に呼び出しをお願いし、「一身上の都合で退職させていただきたい」と口にした瞬間、胸の奥にあった重たい石が少しだけ外れた気がしました。

しかし、その後に待っていたのは想像以上の反応でした。上司は驚いた顔をしたあと、「せっかくここまで育ったのに、辞めるなんてもったいない」と説得を始めました。さらに「人手が足りない時期なんだから、せめてもう少し残ってほしい」と引き留められました。正直、揺らぎそうになりましたが、心の中ではすでに「ここを出る」と決めていたので、はっきりと意思を伝えることを意識しました。

同僚たちの反応もさまざまでした。「羨ましい」「自分も本当は辞めたい」と共感してくれる人もいれば、「逃げるのか」と皮肉交じりに言う人もいました。けれど、そのどれもが「やっぱり自分の選択は間違っていない」と背中を押してくれる材料になったのです。

退職日が近づくにつれて、仕事の引き継ぎで忙しくなり、精神的には疲れる場面もありました。それでも「あと◯日で解放される」というカウントダウンが心の支えになりました。最終出勤日、タイムカードを押した瞬間の安堵感は、これまで感じたことのない解放感でした。電車に揺られながら帰る途中、「ようやく新しい生活が始まる」と小さく笑ってしまったのを、今でもはっきり覚えています。

第七章:退職後すぐの生活

退職した翌朝、久しぶりに目覚ましをかけずに眠った私は、午前10時近くまで布団の中にいました。体の奥に溜まっていた疲れがようやく解けていくようで、「あぁ、本当に終わったんだ」とじわじわ実感しました。平日の朝に外を眺めながら、通勤ラッシュに急ぐ人たちを見たときは、不思議な解放感と少しの罪悪感が入り混じった感覚もありました。

最初の数日はとにかく休むことを優先しました。散らかっていた部屋を片付け、好きな音楽を流しながらコーヒーをゆっくり淹れる。これまで忘れていた「自分の時間」を一つひとつ取り戻すような日々でした。生活リズムは少し緩んだものの、心は確実に軽くなっていったのを覚えています。

ただ、安心感ばかりではありませんでした。ふと夜になると「この先の生活は大丈夫だろうか」「新しい職場でうまくやっていけるのか」という不安が頭をよぎることもありました。でも、不思議と以前のような絶望的な重さはなく、「次に進むための準備期間」として前向きにとらえられるようになっていました。

退職後の数週間は、人生の中で特別な時間でした。何もしていないようで、実は心と体をリセットし、新しいスタートに向けて整えていく大切な期間だったのです。

第八章:転職後の生活と変化

新しい職場に移ってまず驚いたのは、「定時に帰っても誰も文句を言わない」という当たり前の空気でした。仕事を終えたら「お疲れさまでした」と声をかけ合い、それぞれが自分の時間に戻っていく。その光景を初めて見たとき、胸の奥がじんわりと温かくなり、「ここなら続けられる」と心から思えました。

平日は仕事が終わればジムに寄ったり、友人と夕食に出かけたりと、以前は諦めていた時間を取り戻せるようになりました。週末も予定通りに休めるため、趣味や旅行を楽しめる余裕が生まれ、生活全体に活力が戻ってきました。

振り返れば、前の職場では「働くために生きている」感覚に縛られていました。しかし今は、「生きるために働いている」と実感できます。環境が変わるだけで、これほどまでに人生の質が変わるのかと、自分自身がいちばん驚いています。

もちろん、転職活動には不安やリスクもつきものです。しかし、あのまま動かずにいたら、心も体も壊れていたかもしれません。勇気を出して一歩踏み出したことで、私はようやく自分らしい生活を取り戻すことができたのです。


残業や休日出勤が当たり前の職場にいると、「どこも同じだ」「我慢するしかない」と思い込みがちです。私自身もそうやって自分を縛りつけ、心身をすり減らしていました。しかし、一歩を踏み出して環境を変えたことで、働き方も、生活も、気持ちも大きく変わりました。

もちろん転職には不安もあり、勇気も必要です。それでも、今の環境が明らかに自分を苦しめていると感じるなら、その不安を抱えたままでも動き出す価値があります。求人票の言葉を鵜呑みにせず、自分が大切にしたい条件を明確にすることが、未来を変える第一歩になるはずです。

この記事が、同じように「もう限界かもしれない」と悩んでいる方にとって、「自分も動いていいんだ」と思える小さなきっかけになれば嬉しいです。

励みになるので是非シェアよろしくお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次